『前例がない。だからやる』

前例がない。だからやる!―企業活性にかけた私の体当り経営
実業之日本社
樋口廣太郎

読後の感想
 タイトルにもある、実行する理由というよりは、どのようなやり方をしたか、という方法について中心的に書かれており、読み終わった後は率直に言って羊頭狗肉なのかなという感想を持ちました。
 ただ良く考えてみると、今だから当たり前のことも、当時としては画期的であった(らしい)わけであり、自分は昔のことを知らないため当たり前だと感じてしまったのかもしれません。
その意味では、経験不足の人が読んでも響くものが少ない本とも言えるかもしれません。
 企業のトップとしては、理想的な行動をしたと思える人で、こういう人がいたら仕事はかなりやりやすいだろうな(そして結果も出しやすいだろうな)と思いました。

印象的なくだり
私はビールについては素人だということを自覚して、知らないことは、その分野の専門家に話を聞き、あるいは任せることにしました。
とくに、若い人の率直な意見に極力耳を傾けるようにしたつもりです。
このことが、社員のやる気につながったと思います(P093)。

経営者は自らが”集音器”になれ
お客さまの生の声を正確につかむには、市場から出てくるバッド・インフォメーション(悪い情報)を、いかに集めるかに尽きます。
経営者にとっていちばん大事なことは、経営者自らが”集音器”になって音を集めることです(P102)。

本部ビルの隣につくったビアホールは、一、二、三階がビヤレストランで、四階がバンケットルーム、五階が多目的ホールになっています。
注目を集めた屋上のオブジェは、雲ではなく、二十一世紀を目指して燃える集団・アサヒビールの心=炎を表したものです。
別名”ウンコビル”といわれているようですので、念のため(P110)。

京都に近藤悠三さんという人間国宝の陶芸家がいらっしゃいました。
小学校卒で、最後は京都市立芸術大学の学長を務められ、とくに染付けの名匠でした。
この近藤さんの言葉に『職商人(しょくあきんど)』があります。本当に、いい言葉です。
それは「よい品物をつくり、よい仕事をし、毎日一生懸命働いているのに、認めてくれないのは、世の中が悪い」というのは間違いで、モノをつくる人は、職人プラス商人でなければならいないという意味の言葉です。
職人というのは、いい品物をつくる人です。商人というのは、いいことを口先だけでいうのではなく、品物の本当の価値を見出し、いろいろな工夫を凝らして、その品物を理解していただくように努力する人のことです。
職商人は質のいい商品、独創的な商品を作る技術を持った職人の精神と、商品をお客さまに納得して買っていただく商人の精神をあわせもった人という意味です。
どうすれば商品が買っていただけるかということを考えなければ、ただの頑固な職人です(P145)。

権限を委譲するとき、裁量の範囲を決めておくことが大事なポイントです。
それぞれの会社、セクションで立場や仕事の違いで権限の範囲を決めます。
たとえば「この額までの金額であれば決めていい。それ以上の金額になるときは勝手に決めないこと」というように決済額の上限や、外部と契約を結ぶときの
契約範囲などは抑えるべきです(P148)。