『となり町戦争』
集英社
三崎亜記
読後の感想
実際に手を下すわけでもなく、ただただ数字と情報だけが並ぶ空虚な戦争に参加していくというお話。
いわゆるお役所仕事と戦争のギャップを織り交ぜ、覚悟も自覚もないまま戦争に突入していく様はどこか空恐ろしいものを感じました。現実と重ね合わせたからでしょうか。
時折混じる行政文書のリアリティが、いい意味でのアクセントとなり、非現実感を際立たせます。
伏線も小気味良くまとまっていて、引き込まれました。
印象的なくだり
「戦争というものを、あなたの持つイメージだけで限定してしまうのは非常に危険なことです。
戦争というものは、様々な形で私たちの生活の中に入り込んできます。
あなたは確実に今、戦争に手を貸し、戦争に参加しているのです。
どうぞその自覚をなくされないようにお願いいたします。」(P039)