『残業ゼロで成果が上がる!スピード仕事術』

『残業ゼロで成果が上がる!スピード仕事術』
大和書房
吉川 美樹

読後の感想
あれ?読み終わったのに何にも残ってない!ってな本。
これをやればいいよ、みたいなことは書いてあるんだけど、どうやったらできるか、とか現状うまくいかない点をフォローしてないため、「言いっ放し」な部分もチラホラとありました。また、他社(他者)との協力の点が省かれていたのも残念でした(著者は力関係が強いほうの部類に入る仕事なので、却って意識しなかったのかもしれませんが・・・)。
ところで、本の内容とはまったく関係ありませんが、途中まで著者を男性と勘違いしていたため、なんだか変だなぁ(娘を塾に迎えに行くとか一緒にお風呂に入るとか)と思いながら読んでいました。

印象的なくだり
朝時間は、まだ出社時間になっていない取引先も多い時間帯です。
その時間にメールかファックスで用件をお伝えします。
前日、少なくとも私よりは遅くまで仕事をしているはずなので、前日分のメールやファックスなどは処理済みだと思います。
出社すると朝一番に私からのメールが入っている、ファックスが届いている、となれば
出社後一番に見てもらえる可能性が高いわけです(P022)。

時間や雑務に支配されるのは、本来業務ができないことを意味します(P050)。

やらなくてはいけない仕事は絶対やるのですから、何時間かかろうがやらなくてはいけないわけです。
時間の枠なんて関係ないのです。
だから仕事の質計量器みたいなもので1つの仕事の塊を終えるたびに計測する。
質OKとなるまで、その仕事は終わりにならない、これが仕事の計測法だと思います(P060)。

指示されるままに全部請け負い、周囲の流れに身を任せてしまえば、ひたすら時間が経過するだけ。
あなたでなくても、誰にでもできる仕事になってしまいます。
自分にしかできない仕事のパターン、マイパターンを持っている人が成果への近道を知っています(P078)。

私にとっての仕事ができる人とは「速い人」のことです。さらに的確な人です。
(中略)
速いということは失敗を修正できる最大のメリットが享受できるということです(P093)。

『WORLD WAR Z』

『WORLD WAR Z』
マックス・ブルックス
文藝春秋

読後の感想
最初に書いておきますが、僕はパニック映画が得意ではありません。
小さいころ映画のほうの『ポセイドン・アドベンチャー』を祖母宅で見てから
混乱時における人間ドラマみたいなものに魅力を感じなくなってしまいました。
多分ノンフィクションを読み出した時期とかぶっており
「事実は小説よりも奇なり」とか小生意気なことを言い出していたのでしょう。

と、前ふりはさておき、この本は本当に面白かったです。
前述のようなスピード感のあるパニックではなくジワリジワリとくる恐怖感。
架空のゾンビ戦争の10年後を舞台にし、過去を振り返るというインタビュー形式で話が進められていきます。
ただそれだけだと臨場感も半減なのですが、インタビューを受ける名もない市民の話が
妙に現実感があり(国籍などの文化的なものもあいまって)、実際にありそうだなぁというような
ものが多かったのも印象的でした。
そのありそうだなぁというのが、全て人間の愚かな失敗、というのは本当に皮肉な話です。

即効性ではなく遅効性の恐怖がしばらく癖になりそうな印象です。
なんでこんなにはまったんだろう、続きが気になるのだろうと思いながら読み進めましたが
登場人物は全て生き残った人物たちであり、気になるのは「なぜその人は生き残ることができたか」
という点だろうなぁという結論になりました。

最近読んだフィクションの中では久しぶりの大当たりでした。

そうそう、Pさんに聞いた「ゾンビもの」なんていうジャンルがあるのは初めて知りました。
想定ターゲット狭いねぇw

印象的なくだり

あんたは難民の気持ちをわかっていない。
あいつらは死に物狂いだったんだ。
感染はどうにかしなきゃらならない、だが自国の政府の手で寄せ集められ、「処置」されるのはごめんだ。
この二つの強烈な感情のあいだを揺れ動くだけで、それ以外のことを考える余裕なんかなかった。
あんただって、もしも愛する人、家族や子どもが感染し、たとえほんのわずかでも、どこか別の国で治療を受けられる可能性があったら、
どんな手を使ってでもそこに行こうとするだろう?
無理だとわかってたって希望にすがりつこうとするんじゃないか?(P027)。

たいていの人間は、実際に何かが起こるまで、いまのこの日常が続くと信じている。
愚かさのせいでも弱さのせいでもない。
それが人間の性(さが)というものだ。
日常が続くと信じているからといって責めるつもりはない。
自分が他の人々より賢いとか優れていると言う気もない。
所詮は、生まれついた環境のちがいにすぎない(P054)。

ホロコーストを生きのびた者は一人もいないといわれる。
たとえ命だけはなんとか助かったとしても、被害者は取り返しのつかない傷を受け、本来の精神、魂、人間性は永遠に失われてしまったのだと。
それが真実だとは考えたくはない。
だがもしそれが真実だというのなら、ゾンビ戦争を生きのびた者は地上に一人もいないということになるだろう(P522)。