『残像に口紅を』

『残像に口紅を』
筒井康隆

読後の感想
最初の部分を読んで思ったのは、『幽遊白書』の元ネタはこれだったのか、ということ(笑

一章ごとに言葉が一文字ずつ消えていき、どんどん使える言葉が減っていってしまうという形式の小説(例えば「あ」が消えると「愛」という言葉も使えなくなり、概念もなくなる)で、最後には何にもなくなってしまうというもの。

主人公はどんどん話せる言葉が少なくなり、途中から「~です。~ます。」がなくなり「~じゃ」とか言い出したりする。娘の名前の文字が消えてしまうと娘のことも思い出せなくなり、適当な言葉が見つからないため感情表現も乏しくなる。そして言いたいこともどんどん言えなくなり、世界もどんどん閉じてくる。
あれ?これって言葉狩りのことを揶揄してるのかな?と思いながら読み進めました。

若干の概念の矛盾(そもそもあるものを表す言葉がなければ、思い出して感傷に浸ることもないはずなのだが、至るところで消えてしまったものを懐かしむ表現がある)が気になるものの、前衛的で思いついてもやらないようなことをやるセンスは流石だと思いました。
伊達に「時かけ」書いてませんね(褒めてます

『スプートニクの恋人』

『スプートニクの恋人』
講談社
村上春樹

読後の感想
記号と象徴のちがいについての会話だけ妙に頭にこびりつきました。
ところで、一度目に読んだ時は、最後の部分については、結局現実なのか、空想(妄想)なのかはっきりしないなぁ、と感じていたのですが、二回目に読んでみると、むしろ最後(電話の部分)って必要なのかぁと感じるようになりました。
つまり、あってもなくてもいい部分かもしれないと感じたということは、極論すると、その部分を理解しなくても、作品として成立している、ということなのかぁと。

いまいち煮え切らない感想です。

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