『「離活」――終わりの始まりを見極める技術』
原 誠
講談社
読後の感想
この本を電車の中で読んでいたら、何度かジロっと見られた。なんか周りの人の目がきつかった気がする(気のせい?
印象的なくだり
理論的には、原因が除去できないときは、決断のときだと思います。ですから、破綻の原因は非常に重要な意味があるのです(P033)。
結婚してから問題となることに、宗教や病気の問題があります。当事者は無宗教だったり、健康だったりしても
、家族にカルト的な宗教に入っている人がいたり、精神ないし神経関係の病をもっていたりすることがあります。
その場合、それが嫌だということで、結婚を解消できると思いますか?
できません。
なぜならば、宗教や病気に対する偏見になってしまうからです(P046)。
最高裁判所が、結婚の本質について、「両性が永続的な精神的及び肉体的結合を目的として真摯な意思を持って共同生活を営むことにある」との見解を示したことは前述しました。
昭和六二年九月二日のことです。戦後、いわゆる身分法が改正されてから約四0年の歳月が流れています。しかも、結婚の本質が離婚事件で述べられたというもの興味深いです。すなわち、離婚は、結婚生活の本質抜きにして語れないということが述べられています(P056)。
性格の不一致とは何なのか?
私は、性格の不一致とは「ものの考え方・価値観・人生観が同一ではない」というように理解していたのですが、インターネットでこのような記載を見つけ、なるほどと思う考え方でしたので紹介します。
「性格の不一致」とは、「行動パターンの不一致」だというのです。たとえば、何かトラブルが起こった時、妻は感情的に話そうとするのに対し、夫は黙ってしまう。妻は話さなければ分からないというのに対し、夫は何でも話さなければ分からないようでは夫婦ではない・・・・・・が如しです。これは、「相手が自分の望む行動パターンで対応してくれない」ということで、「行動パターンの不一致」になるというのだそうです(P071)。
不倫をした夫の友人が、密会場所を提供して、いわば不倫の共同不法行為者の一人として一○○万円の慰謝料が認められたというちょっぴり毛色の変わった字案もありました(P079)。
離婚届不受理制度
夫婦ゲンカをしてうっかり離婚届に署名をしてしまった、その離婚届は相手が持って行ってしまったなどという場合、この届けを役所に受理されないよう「不受理申出制度」を利用します。戸籍法ではなく、民事局長通達によって運用されている制度です。
対象となる届出は、離婚届だけではなく、婚姻届や養子縁組届も入ります。これらも相続権を発生させる重要な身分行為だからです。市町村役場に書式があるはずですから、勝手に離婚届が出されるような心配がありましたから、この不受理申出を行ってください(P087)。
離婚を仕掛ける側の手段・考え方
「離婚」の二文字が浮かんだとき、まず取る方法・考え方は、離婚を仕掛ける側と仕掛けられた側で異なります。
仕掛ける側が「離婚」の二文字を浮かべたとき、まずその理由を挙げてみましょう。
他に好きな人ができたとき、あるいはすでに他の異性と性的関係になってしまった場合、有責配偶者なのですから、相応の償いは覚悟すべきです。とはいえ、それでは「離活」の戦略になりませんから、まずは有責性を悟られない行動をすることをお勧めします。個人的には良心の呵責を感じますが、あくまで戦略としてわりきったアドバイスです。
①帰宅は遅くならないようにする
②土日・休日は家にいる。
③そわそわしない。
④隠し立てしない。
⑤自宅でメールを打たない。
など、前記の予兆と逆の行動を取ってみましょう。「好きな人ができたから別れてほしい」などと、墓穴を掘るような別れの言葉は法律かとしてはお勧めできません。調停・訴訟に進んだとき、この言葉があなたを悪者にする決定打になるからです。
やはり、原点に戻り、「君とは生き方・価値観が合わない。これから一生一緒にいることはお互いにマイナスだと思う」などと、性格の不一致に離婚の理由を求めるほうがベターです。
とすると、やはり、あなたの生き方とパートナーの生き方を観察しておく必要があります。なぜなら、相手から「どうして?」と質問されることが多分にあるからです。そのとき、「君はあのときこういったよね」あるいは「あのときの行動は、ぼくと正反対だった」などと説明することができます。
もし、そのような準備がないと、そのときになって考えたりして不審がられます。「もしかして、他に好きな人ができたんじゃない?」などとカマをかけられたりして、思わず白状してしまうか、白状とまでいかずとも、ドギマギして慌てたりして隠し事があることを察知されたりします(P109)。
仕掛けられた側の手段・考え方
明確に仕掛けられれば、ショックを受けるものの、それなりの対応はありそうです。
まずは、「なぜ?」「どうして?」を連発してみましょう。相手は必ず、理由をいうはずです。「なぜ?」を連発すれば、逆上していても、相手のいうことのいくつかは理解できるはずです。「離婚」の二文字が浮かんだら、まず「なぜ?」と叫び、理由をさぐりましょう。
相手のいうことが少し理解できたとしても、これに同意しないことが必要です。「なぜ?」の次は、「分からない」、「理解できない」と連発しましょう。
そうしておいて、対策を考えることにするのです。それには時間をかけるほうがよろしいようです。時間稼ぎのための「なぜ?」であり、「理解できない」なのです。
逆上して、離婚届に署名してしまったりすると、前提の法律知識として解説した「不受理の申出」が必要になってりします。
つまり、冷静になって後悔しないことが大切です。それには時間を取りましょう。
いきなり離婚を切り出された場合のショックは計り知れないものがあると思いますが、間違っても他の人(たとえば子どもなど)に怒りをぶつけるようなことはすべきではありません(P111)。
破綻の予兆に始まり、何らかの決着が付くまでの夫婦関係をどう生きるか。これはこれで難問です。無視し合えばいいのですが、どちらかが文句をいえば、他方もこれをいい返し、戦線は拡大します。かといって、無視し合っていれば、そのまま「家庭内別居」として時が経過していくだけになります。
家庭内別居は別居と異なって、明確な基準がありません。例の、有責配偶者の離婚請求の条件の一つ、すなわち相当期間の別居に当てはまるわけではありません。とすると、有責配偶者にとってはこの期間は単なる心苦しい時間が続くだけであり、マイナスです。対する相手にとっては、メリットなのかデメリットなのか、判断しかねます(P120)。
離婚参謀を選ぶ
①離婚問題について豊富な経験と卓越した知識があること
②依頼者のあなたの話に耳を傾けてくれること
③相手方の動きを察知する推理力のあること
④一種のカウンセリングを含め、適切な対応をしてくれること(P151)。
実際、特別な出会いであったはずの男女がなぜ別れなければならなくなったのでしょうか。中には、「なぜ別れなければならないのか、自分でも分からない。ただ、今までの人生は自分で選んだ人生ではなかったような気がする。これからは好きなように生きたい」などとおっしゃる方もいますから、他人の私に「なぜ別れるのか」理解できないのもやむえをえないのかもしれません。
ともあれ、誰の言葉だったか忘れましたが、「愛してその人を得るのが一番よい。愛して、その人を失うのがその次によい」という言葉がありました。この言葉に依れば、離婚経験も捨てたものではなさそうです。愛して一度は得ることができたのですから(P204)。
未婚かつ結婚する相手もいませんが、なんか真剣に読んでしまいました……。本屋にいくとうまく離婚するためのハウツー本があるのを見ますけど、そういうのとは違った本みたいですね。
なるべく離婚しないに越したことはないけど、もしやむをえず、というときの本かなぁという印象です。
手続中心だったので、非常に参考になりました(何の?