『キングスマン ゴールデンサークル』

スポンサーリンク

『キングスマン ゴールデンサークル』

鑑賞後の感想

ネタバレありです。

 

 

 

前作ではずのガラハッド(ハリー・ハート)が思いっきり、ポスターに載っていて、いきなりネタバレ感のある滑り出しでした。

始まっていきなりキングスマン候補生から悪の道に転がり落ちた裏切り者のチャーリーとの戦い。
ロンドンの町をカーチェイスにいきなり始まったファイトシーンにやや唐突感を感じながら進みます。

視点の中心を人物に置いた独特の構図は相変わらずド迫力です
イタリアのスキー場では、ウイスキーが大活躍して援護なしにドタドタ飛び込んで行ってしまいます。
上からの構図でクルクルと回転しながら、バンバン銃を撃っていく姿は、この作品の一番の見どころと言えるのは間違いありません。
しかしながら、戦闘シーンはこのオープニングを境に、全体的にトーンダウンしていってしまいます。

ステイツマンのウィスキーによるバー恒例の「manner maketh man」という素人ボコ殴りシーンでは、投げ縄を使った動きが目新しいものの想定の範疇だし、その他のシーンもドーナツがぐるぐる転がるシーンや、ハサミで串刺しシーン、ショットガンの弾をロープで絡み取りながら跳ね返すなど、もう普通の戦闘シーンでは満足できない体になっていました(笑

キャラクターといえば、空気みたいなシャンパンに、次作への複線要因のテキーラ、女優の年齢が51歳という(!?)ジンジャーと、新しい登場人物もどこか中途半端。

しかも、前作からのロキシーが登場早々ミサイルにやられるシーンに、いきなりの衝撃。見せ場のないキャラクターはあっという間に処分されてしまいます。
逆に、敵役も少し物足りず、パピーの最後はあっけなくて「え?もう終わり?」みたいな感じだし、チャーリーは右手をハッキングされるというオチ。

連作としての影響もすこぶる大きく、最低限の説明はあるものの前作を見ていないときっと楽しめないでしょう。絶対ではないけど。

とにもかくにも、エルトン・ジョンの使い方には度肝を抜かれました。
ゲスト出演ならば、普通はあんなに台詞も多くないし、ひどい扱いも受けないのに、今回はやりたい放題。
ゲイであるというカミングアウトも徹底的に利用していじり倒されていました。

スポンサーリンク

『シング・ストリート 未来へのうた』

「シング・ストリート 未来へのうた」
原題:Sing Street

監督 ジョン・カーニー
出演者
主人公コナー
フェルディア・ウォルシュ=ピーロ

ヒロインラフィーナ
ルーシー・ボイントン

母親ペニー
マリア・ドイル・ケネデ

エイダン・ギレン

兄ブレンダン
ジャック・レイナー

鑑賞後の感想
最高最高。
最近の映画の中では抜群でした。

舞台は1980年代のアイルランド。
主人公の高校生はもてたいためにバンドを始める。
というありがちなストーリーの中に
青春って感じの青くてムズムズする感じや
もう一歩踏み込めば、というイライラ感も
すべて消化しきった映画でした。
プロムあたりの場面は、まんまアメリカの青春です。
自分のバンドがプロムで演奏し、みんながダンス。
兄はハーレーで乗りつけ、両親は仲良く踊る。
ヒロインはドレスアップして遅れて登場。
100パーセントコナーの妄想の映像化でにやり。
何度も見たいシーンです。

というか、校長がアクロバットで登場って
どんな願望の現れなんだろうね。

バンドメンバーの中でもウサギ好きの彼は
控えめに言っても最高でした。
設定攻めすぎ。そしてローディもやるじゃん。

アイルランドって映画の舞台だといつも不況の気がする。

a-haやデュラン・デュラン、フィルコリンズと
英国ロック好きにはたまらない。
個人的にはtwo door cinema clubを思い出しながら聞いていました。

実は裏テーマにお兄さんのストーリーがあり
なんかホロリとしてしまった。
兄には兄のストーリーがあって
描かれていないけど、実は弟に自分を重ねていたんだなぁと。

ラストの嵐は、二人が海を渡ったあとの暗示なのだろうか、と
思いながら見た映画でした。

あと、イエズス会のだと離婚できないのか、と
思いました(今は違うかも)。

どっとはらい。

『ペンタゴン・ペーパーズ/最高機密文書』

『ペンタゴン・ペーパーズ/最高機密文書』
The Post

監督 スティーヴン・スピルバーグ
脚本 リズ・ハンナ ジョシュ・シンガー
製作 エイミー・パスカル
スティーヴン・スピルバーグ
クリスティ・マコスコ・クリーガー
出演者
メリル・ストリープ
トム・ハンクス
サラ・ポールソン
ボブ・オデンカーク
音楽 ジョン・ウィリアムズ
撮影 ヤヌス・カミンスキー
編集 マイケル・カーン

鑑賞後の感想
重い内容で面白かった、んですけどね。

あらすじを簡単に書くと、物語の舞台はワシントンポスト。
ワシントンD.C.の地方紙であるが、世界的影響力を与える「高級紙」の部類であり、
新聞の読者もアメリカ合衆国の高学歴層が大半である、という触れ込み。
社主はメリル・ストリープ演じるキャサリン・グラハム。
編集主幹はトム・ハンクス演じるベン・ブラッドリー。
アメリカのジャーナリストにおける政治家との関係性が分からないと登場人物の苦悩がよく分からないですね、正直言って。
社主のキャサリンと親しい友人である元国務長官のマクラマラの関係や、編集主幹のベン・ブラッドリーとJ・F・ケネディと関係など(ベンは大統領の別荘でもあるキャンプ・デービッドにも招かれる間柄だった様子)新聞社側の悩みが正直分からないので掲載するかしないかの段階が長すぎてちょっと間延びしてしました。

とどめのキャサリンのセリフ。
「祖父の会社ではない。夫の会社でもない。私の会社よ。」はメリル・ストリープしか言えない凄みです。

『散歩する侵略者』

『散歩する侵略者』
監督 黒沢清
脚本 田中幸子
長澤まさみ
松田龍平
長谷川博己

鑑賞後の感想
数日間行方不明だった夫が戻ってきたら人格が変わっていた、というところから始まる日常系のホラーコメディです。
乗り移られた後は人格がまるっきり代わってしまい、日常の中にある非日常感が恐怖でした。
具体的には、概念を奪われた人はその概念を理解できなくなり、人が変わったようになってしまうのです。例えば、「家族」ってなんだろう、「愛」ってなんだろうという思春期にありがちな疑問って言い出し始めます。それを受けた周りの人は、「はぁ?」って感じ。このやりとりを見るとしみじみと「静かに狂う」という怖さを思いますね。
宇宙からの侵略者は、侵略する過程で様々な概念を奪い取っており、概念を奪うために相手と会話をしないといけないという謎ルールが、より恐怖感を増していました。

全体的な感想としては、元々部隊が原作のようで、会話劇で淡々と進むストーリーと、とんでもな映像が違和感ありまくりの世界観を醸し出しており、一回見ただけでも強烈な印象を受けるシーンが多いのが印象的でした。

松田龍平さんは別格として、垣松祐里さんの凶暴な演技は背筋が凍りそうでした、アクション担当で瞬殺です(色んな意味で)

『22年目の告白』

ややネタバレです。

22年目の告白人物相関図.jpg

「22年目の告白」

鑑賞のきっかけ
映画館で予告編で見て興味を持っていました。
予告編でいきなり殺人犯と自称する曾根崎雅人(演:藤原竜也)が「はじめまして、私が殺人犯です」と記者会見するシーンがとても印象的でした。
長らく「いつか見る映画リスト」に入っていたのですが、タイミングが合ってようやく見ることができました。

鑑賞後の感想
個人的にいま一番好きな映画監督の一人である入江悠監督の作品です。
現代社会派サスペンスらしく、ツイッター、Youtube、ニコニコ、とあらゆる方向に情報が拡散していき、どんどん主題がぶれていく姿が非常
に皮肉的に描かれていました。

5件の連続殺人事件が起こったのは1995年。阪神大震災の実際の映像を差し込みながら、過去の事件を振り返っていました。おそらくカメラを変えているのか、22年前を描くシーンは画質も粗くて、昔風の臨場感たっぷりでした。プロットうまいなぁ。

殺人の様子を最も親しい人に見せながら殺害するといった倒錯した殺害方法を好む犯人に家族を殺された遺族たち。それによって心理的にトラウマを受けた遺族たちは、22年経った現在でも、感情が引き続いている姿が痛々しく描かれています。
その遺族たちはそれぞれの立場を保ちつつも、互いに連絡を取り合い、慰めあっている姿はどこかしら、拉致被害者の家族団を連想させました。

主人公の刑事牧村航(演:伊藤英明)は過去の殺人事件の捜査担当者であり、かつ先輩を失ったという被害者側でもある立場。その難しい立場からか、曾根崎を憎む描写よりもどちらかといえば抑える側に回るほうが多い役回りです(と、思っていたら後でビックリが)

いわゆる殺人事件の時効(公訴時効)によって自称殺人犯を裁けない非難に対して、殺人犯の自伝を出版をする出版社も、「私たちが裁きましょう」と声を上げるニュース番組のキャスター仙堂俊雄(演:仲村トオル)も、vs表現の自由という対立構造では同じなのですが、ちょっと皮肉な描き方でしたね。

社会巻き込み型の殺人事件で、証拠が散逸している中、見ている観客も真実がなにか分からない、という点は、『白ゆき姫殺人事件』を少し思い出しながら見ました。

ラストシーンは、恨みを晴らした、という解釈でいいのかなぁ、きっと。

小ネタとして岸美晴(演:夏帆)の家に、かえるのピクルスありましたね、かわいい。