『春を背負って』

『春を背負って』

監督
木村大作
原作
笹本稜平
出演者
松山ケンイチ
蒼井優
豊川悦司

音楽
池辺晋一郎

鑑賞後の感想
『点の記』で有名な木村大作監督の作品。とにかく絵がすごい。
撮影にどれだけ苦労したんだろうかというくらいすごい。

主人公亨は、富山県の山小屋で働く父親に反発して東京でトレーダーの仕事に就く。
ところが、ある日父親が他人をかばって亡くなったとの連絡が入る
急逝した父親の葬儀の場などで、在りし日の父の仕事ぶりを周囲の人から聞き、反発していた父親の仕事が、どれだけの人に影響を与えていたかを思い知る。
その後、今までの考えて改めて、山小屋で働くまでに心が動き、最終的に山小屋の主人になるまでの成長譚です。

おそらく駄目押しになったのは、菫荘の父親の部屋にあった、亨自身が子供の頃の写真。あれを見て落ちない息子はいない。

ただただ驚かされるのは立山をはじめとした自然の映像の豊かさ。
中でも冬の厳しさはダントツで、この絵を取るためにどれだけの負担があっただろうかと、苦労が偲ばれる映像ばかりでした。

とにかく、自然相手に人間の無力さを感じる場面ばかりなので、ちっぽけな自分を客観的に見つめ直したい方にはオススメです。

それから蒼井優無双です。笑顔にやられたい人は是非。

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『キングスマン ゴールデンサークル』

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『キングスマン ゴールデンサークル』

鑑賞後の感想

ネタバレありです。

 

 

 

前作ではずのガラハッド(ハリー・ハート)が思いっきり、ポスターに載っていて、いきなりネタバレ感のある滑り出しでした。

始まっていきなりキングスマン候補生から悪の道に転がり落ちた裏切り者のチャーリーとの戦い。
ロンドンの町をカーチェイスにいきなり始まったファイトシーンにやや唐突感を感じながら進みます。

視点の中心を人物に置いた独特の構図は相変わらずド迫力です
イタリアのスキー場では、ウイスキーが大活躍して援護なしにドタドタ飛び込んで行ってしまいます。
上からの構図でクルクルと回転しながら、バンバン銃を撃っていく姿は、この作品の一番の見どころと言えるのは間違いありません。
しかしながら、戦闘シーンはこのオープニングを境に、全体的にトーンダウンしていってしまいます。

ステイツマンのウィスキーによるバー恒例の「manner maketh man」という素人ボコ殴りシーンでは、投げ縄を使った動きが目新しいものの想定の範疇だし、その他のシーンもドーナツがぐるぐる転がるシーンや、ハサミで串刺しシーン、ショットガンの弾をロープで絡み取りながら跳ね返すなど、もう普通の戦闘シーンでは満足できない体になっていました(笑

キャラクターといえば、空気みたいなシャンパンに、次作への複線要因のテキーラ、女優の年齢が51歳という(!?)ジンジャーと、新しい登場人物もどこか中途半端。

しかも、前作からのロキシーが登場早々ミサイルにやられるシーンに、いきなりの衝撃。見せ場のないキャラクターはあっという間に処分されてしまいます。
逆に、敵役も少し物足りず、パピーの最後はあっけなくて「え?もう終わり?」みたいな感じだし、チャーリーは右手をハッキングされるというオチ。

連作としての影響もすこぶる大きく、最低限の説明はあるものの前作を見ていないときっと楽しめないでしょう。絶対ではないけど。

とにもかくにも、エルトン・ジョンの使い方には度肝を抜かれました。
ゲスト出演ならば、普通はあんなに台詞も多くないし、ひどい扱いも受けないのに、今回はやりたい放題。
ゲイであるというカミングアウトも徹底的に利用していじり倒されていました。

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『シング・ストリート 未来へのうた』

「シング・ストリート 未来へのうた」
原題:Sing Street

監督 ジョン・カーニー
出演者
主人公コナー
フェルディア・ウォルシュ=ピーロ

ヒロインラフィーナ
ルーシー・ボイントン

母親ペニー
マリア・ドイル・ケネデ

エイダン・ギレン

兄ブレンダン
ジャック・レイナー

鑑賞後の感想
最高最高。
最近の映画の中では抜群でした。

舞台は1980年代のアイルランド。
主人公の高校生はもてたいためにバンドを始める。
というありがちなストーリーの中に
青春って感じの青くてムズムズする感じや
もう一歩踏み込めば、というイライラ感も
すべて消化しきった映画でした。
プロムあたりの場面は、まんまアメリカの青春です。
自分のバンドがプロムで演奏し、みんながダンス。
兄はハーレーで乗りつけ、両親は仲良く踊る。
ヒロインはドレスアップして遅れて登場。
100パーセントコナーの妄想の映像化でにやり。
何度も見たいシーンです。

というか、校長がアクロバットで登場って
どんな願望の現れなんだろうね。

バンドメンバーの中でもウサギ好きの彼は
控えめに言っても最高でした。
設定攻めすぎ。そしてローディもやるじゃん。

アイルランドって映画の舞台だといつも不況の気がする。

a-haやデュラン・デュラン、フィルコリンズと
英国ロック好きにはたまらない。
個人的にはtwo door cinema clubを思い出しながら聞いていました。

実は裏テーマにお兄さんのストーリーがあり
なんかホロリとしてしまった。
兄には兄のストーリーがあって
描かれていないけど、実は弟に自分を重ねていたんだなぁと。

ラストの嵐は、二人が海を渡ったあとの暗示なのだろうか、と
思いながら見た映画でした。

あと、イエズス会のだと離婚できないのか、と
思いました(今は違うかも)。

どっとはらい。

『ペンタゴン・ペーパーズ/最高機密文書』

『ペンタゴン・ペーパーズ/最高機密文書』
The Post

監督 スティーヴン・スピルバーグ
脚本 リズ・ハンナ ジョシュ・シンガー
製作 エイミー・パスカル
スティーヴン・スピルバーグ
クリスティ・マコスコ・クリーガー
出演者
メリル・ストリープ
トム・ハンクス
サラ・ポールソン
ボブ・オデンカーク
音楽 ジョン・ウィリアムズ
撮影 ヤヌス・カミンスキー
編集 マイケル・カーン

鑑賞後の感想
重い内容で面白かった、んですけどね。

あらすじを簡単に書くと、物語の舞台はワシントンポスト。
ワシントンD.C.の地方紙であるが、世界的影響力を与える「高級紙」の部類であり、
新聞の読者もアメリカ合衆国の高学歴層が大半である、という触れ込み。
社主はメリル・ストリープ演じるキャサリン・グラハム。
編集主幹はトム・ハンクス演じるベン・ブラッドリー。
アメリカのジャーナリストにおける政治家との関係性が分からないと登場人物の苦悩がよく分からないですね、正直言って。
社主のキャサリンと親しい友人である元国務長官のマクラマラの関係や、編集主幹のベン・ブラッドリーとJ・F・ケネディと関係など(ベンは大統領の別荘でもあるキャンプ・デービッドにも招かれる間柄だった様子)新聞社側の悩みが正直分からないので掲載するかしないかの段階が長すぎてちょっと間延びしてしました。

とどめのキャサリンのセリフ。
「祖父の会社ではない。夫の会社でもない。私の会社よ。」はメリル・ストリープしか言えない凄みです。

『散歩する侵略者』

『散歩する侵略者』
監督 黒沢清
脚本 田中幸子
長澤まさみ
松田龍平
長谷川博己

鑑賞後の感想
数日間行方不明だった夫が戻ってきたら人格が変わっていた、というところから始まる日常系のホラーコメディです。
乗り移られた後は人格がまるっきり代わってしまい、日常の中にある非日常感が恐怖でした。
具体的には、概念を奪われた人はその概念を理解できなくなり、人が変わったようになってしまうのです。例えば、「家族」ってなんだろう、「愛」ってなんだろうという思春期にありがちな疑問って言い出し始めます。それを受けた周りの人は、「はぁ?」って感じ。このやりとりを見るとしみじみと「静かに狂う」という怖さを思いますね。
宇宙からの侵略者は、侵略する過程で様々な概念を奪い取っており、概念を奪うために相手と会話をしないといけないという謎ルールが、より恐怖感を増していました。

全体的な感想としては、元々部隊が原作のようで、会話劇で淡々と進むストーリーと、とんでもな映像が違和感ありまくりの世界観を醸し出しており、一回見ただけでも強烈な印象を受けるシーンが多いのが印象的でした。

松田龍平さんは別格として、垣松祐里さんの凶暴な演技は背筋が凍りそうでした、アクション担当で瞬殺です(色んな意味で)