『ユダヤの商法』

ユダヤの商法
藤田田(デンと発音してください)

本を読む前の背景
ソフトバンクの孫社長をはじめとして、この人の影響を受けて商売を始めたという人は多いのではないでしょうか?
実は前々から読んでみたいと思っていたのですが、全然本が見つかりませんでした。
アマゾンとかプレミアムがついて6000円とかするし!ベストセラーとなっているはずなので、古本屋さん(ブックオフにあらず)をちょこっと見たりしたのですが、結局手に入れることかなわず、図書館で借りる羽目になりました(しかも30人待ちとかで三ヶ月待ちました)。

読後の感想
一代でマクドナルドを大きく育て上げた経営理念はこういうことだったのか、感心することしきりでした。
例えば、

「ユダヤ商法に商品はふたつしかない。それは女と口である」
私は二十年近い貿易生活の中で、ユダヤ人から何度、この言葉を聞かされたか分からない。
ユダヤ人にいわせると、これは『ユダヤ商法四千年の公理』なのだそうだ。しかも『公理であるから証明は不要』なのだという(P.028)。

であると考え、女性向けのアクセサリーを売り、マクドナルドを売るなど、この人の場合は言いっぱなしでないところがより説得力を増していますね。

今でこそ、書いてあることは当たり前の部類に入っていることも多いのですが、初版の昭和47年ごろなど、考えもつかなかったのだろうかとちょっと驚きでした。

書かれた当時のことを考えてみると、藤田さんは、貿易の仕事を経ることによって、国際情勢(平たくいうと海外での常識・マナー)を学んだのでしょう。そして、そのマナーは一番厳しいユダヤ風だったということ。ユダヤ式のマナーに耐えうる藤田さんは(おそらく口コミで)他の人からも信頼され、いい話が舞い込んでくるようになった、とこういったところでしょうか(想像です)。

商売の原理原則はおそらく今も昔も通じるところが多いと思います。
ただ、薄利多売はダメだというようないわゆる多数派相手にする商売はなかなかスタートからそうは行きません。その意味では、原理原則を学べますが実践向きではない気がします。どちらかというと商売の教科書的(しかも修身みたい)に捉えると良いかと思いました。

実際に取り入れてみる

商売人が数字に強くなければならないのは当然のことだが、中でもユダヤ人の数字に対する強さは特筆すべきものがある。それほどにユダヤ人はふだんから生活の中へ数字を持ち込んで数字を生活の一部としているからだ。
例えば、日本人は「きょうはばかに暑いですね」とか「少し寒くなったようですな」というが、ユダヤ人は暑さ寒さも数字に換算する。「きょうは華氏八十度だ」「今は華氏六十度だ」というように、正確に寒暖計の数字を読む(P.017)。

印象的なくだり

迫害され続けてきたユダヤ人は、税金を払うという約束で、その国の国籍を与えられていると思っているのだ。税金に対しては厳正である。
そうはいってもむざむざ税金をとられっ放しにされるユダヤ人ではない。税金を払ってもちゃんと釣り合うような商売をする。つまり、利益計算をする時に、税金分をあらかじめ差し引いた利益をはじき、それで商売をするのである。
「五十万円の利益があった」
という時、日本ではその利益が「税込み」の履歴であるのに対して、ユダヤ人のいう利益
「税引き後」なのである(P.056)。

『成功はゴミ箱の中に』

【送料無料】成功はゴミ箱の中に

【送料無料】成功はゴミ箱の中に
価格:1,500円(税込、送料別)

「成功はゴミ箱の中に」
レイ・クロック

読後の感想
読み終わってから表紙をもう一度きちんと確認する。
これ「自伝」なんだよねぇ、「自伝」。
ライターと共著では書かれているのですが、あくまでも「自伝」。
なんかこう、ものすごくいいものや体系的に整理されたものを
期待して読むと若干がっかりするかもしれません。

52歳から全く畑違いのファーストフードの世界に飛び込み、
いまや世界一ともいえるフランチャイズチェーンを作り上げる、という
それは普通の人では考えられないようなことをやってきている訳なので、
理解の範疇を越えているのは当たり前なのですが、
奥さんと離婚して人妻にプロポーズし、
それに振られると、たまたま出会った人と結婚。
その後くだんの人妻が「やっぱり、わたしあなたのことが・・・」(想像)なんて言われると
すぐに離婚して、(元)人妻と再婚、と、やっぱりでたらめな人だなぁと感じました。

それにしても仕事に対する情熱は時代背景を割り引いたとしてもすごい。
その根底にあるのは、「お客様に対するサービス」の意識の違い。

ただ、自伝は飾っていないのか意図的なのか
悪役に徹していると読みとれることも多く、
多少の割引が必要なのかなぁと思う部分もしばしばあります。

ユニクロをきてiPhoneをいじりながら、ハンバーガーを食べるのが好きな方は是非。

印象的なくだり
良き管理者は不正行為を嫌う。
部下が誠実に働きつつも、時に犯してしまうミスならば許容できる。
しかし不正行為には強い意志で処置を取るべきだ(P.111)。

こうした改良の目的は、従業員の仕事を簡素化し、能率を上げることだった。
そのほかのコスト削減、在庫管理などといった考慮すべき事項は、
確かに重要ではあるが、我々には実際に作業する従業員がいちばん重要だった。
我々の作業工程において、製品は従業員を中心にして、貫流しなくてはならなかった。
さもなければ、工場全体が行き詰まってしまう(P.163)。

マクドナルドのレストランは、アメリカの中小企業の最たるモデルであり、
夫妻で協力し合うのは我々の基本原則であった。
主として、夫が経営やオペレーションに注意を払い、
妻が帳簿をつけ人事を取り仕切る、といった相互利益の仕組みは会社の全レベルにも応用できる。
だから私は、常にオーナーの夫人たちには夫の仕事には関わるように勧めている。
彼が汗水たらしてハンバーグを焼く担当であろうと、
高級机の向こう側で書類を相手に仕事していようと、
一人より二人のほうがよいに決まっているのだから(P.165)。

競争相手にスパイを送り込むべきだと真剣に言う人間もいた。
信じられるだろうか。ドナルド・マクドナルドがスパイだったなんて!
そんなばかげた考えに対する私の回答はこうだ。
「競争相手のすべてを知りたければゴミ箱の中を調べればいい。
知りたいものは全部転がっている」
私が深夜二時に競争相手のゴミ箱を漁って、
前日に肉を何箱、パンをどれだけ消費したのか調べたことは一度や二度ではない(P.182)。

「レイ、私はあなたから多くの注文を頂いたことへの感謝を、何らかの形で表したい。
あなたの店に何かあげられるものはないかなーサインや時計ー何がいいかい?」
「なあハリー、君は私という人間をよく知らない、それに免じて今回は許そう」と私は言った。
「だが、最初で最後だからはっきり話そう。私は良い製品以外、何もいらない。
これからは、ワインを送ったり、ディナーに誘ったり、
クリスマスプレゼントを買ったりしないでくれ。
コストを下げられるのなら、その分をマクドナルド店の
フランチャイズパートナーたちに還元してほしいんだ」(P.217)。

やり遂げろーこの世界で継続ほど価値のあるものはない。
才能は違うー才能があっても失敗している人間はたくさんいる。
天才も違うー恵まれなかった天才はことわざになるほどこの世にいる。
教育も違うー世界には教育を受けた落伍者があふれている。
信念と継続だけが全能である
(P.322)。

ここからはあとがき(ロバート・アンダーソン)
クロックの本当の貢献はアメリカ人の味覚を標準化したことではなく、
マクドナルドのフランチャイズシステムをつくり上げたことである(P.331)。

あとがき対談(柳井正)
レイ・クロックの印象的な言葉が載っていて・・・・・・。
「Be daring(勇気を持って)、Be first(誰よりも先に)、Be different(人と違ったことをする)」
これこそ商売の真髄だと思って、手帳に書き写したのを覚えています(P.340)。

本来、新しく始める事業とはユニクロの力がいきる業種、
もしくはプラスの相乗効果が望める業種でないといけない。
そうでなければ新しい事業に進出する意味はない。
これ、当たり前のことです。原理原則です。僕も一応原理原則だと知っていました。
けれども本当の意味では、この原理原則を「わかっていなかった」。
わかるというのは身に沁みることです。
自分で体験して、これが原理原則なんだなと実感しない限り、
その後の行動指針にはなりません。
僕は「知った」のではなく、「わかって」よかったと思っています(P.362)。