袴田事件

 タイトルは、同名の殺人事件名より、なお死刑確定済み(共産党袴田事件じゃないよ)。

 なぜかロースクールトピックに「袴田事件」の再審について(正確には再審請求→棄却→即時抗告→棄却→特別抗告)のちょっと盲目的な書き込みがあったので調べてみた。
 以下、簡単に。
 静岡県で殺人事件、被害者四人。死刑確定後、再審の動きがあり、一審の(左陪席の)裁判官、熊本典道という人が、無罪の心証があったとのことで上申書を提出した。

詳しく知りたい人はwikipekiaでも。
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E8%A2%B4%E7%94%B0%E4%BA%8B%E4%BB%B6

 結構探したのだが、判決文見つからず。再審を支援する団体のところに判決文の写しと思われるものがあったんだけど、正確かどうかは分からないので、突っ込んでの言及は避ける。
 ただ一審判決において、自白の一部排除を行っている。
理由→罪となるべき事実→自白の一部排除
<以下引用>
このような実態をもつ本件司法警察員の被告人に対する九月六日、被告人が自白をするまでの取調は、――外部と遮断された密室での取調自体のもつ雰囲気の特殊性をもあわせて考慮すると――被告人の自由な意思決定に対して強制的・威圧的な影響を与える性質のものであるといわざるをえない.
 したがって、このよう取調の結果なされた自白およびこのような取調の影響の下になされた自白は、何れも「自由で合理的な選択」にもとずく自白と認めるのは困難といわざるをえず、従って、刑事訴訟法第三一九条第一項の「任意にされたものでない疑いのある自白」に該当し、証拠とすることができないものと認める。
 よって、前記のごとき司法警察員の取調の結果ないし取調の影響のもとでなされたことが明らかな自白を録取した供述調書二八通は、刑事訴松(ママ)法第三一九条第一項によって証拠とすることができないので、職権でこれを排除する。

引用元
http://www.hakamada.net/hanketu/1hanketu.htm

 ま、孫引きなんて怖い…。

 個人的感想。合議で左陪席が、裁判長と右陪席を説得できないのであれば、それなりの根拠がなかったんだろうと思える。通例、左陪席が一番経験が浅いからである。また、その左陪席が判決文を起案することが多い。熊本典道が起案した(と言っているが)のであれば、
一審判決の
<引用>
叙上の如き諸般の情状を考慮すれば、今や死刑廃止制をとる国はふえ、これを存置する国においても死刑は例外的、象徴的な刑罰となりつつある世界のすう勢を考慮の上被告人が道路交通法違反のほか前科のない身であることなど記録に顕れたすべての有利な事情を斟酌してもなお本件においては正義の観念が最後の手段として要求するものは極刑以外にないものとの結論に達し所定刑中死刑を選択する。
 よって、被告人を死刑に処する。

についてはどのような感想を抱けばよいのだろうか、正直戸惑う。一審の判決言い渡し時の裁判官裁判長石見勝四、裁判官高井吉夫、控訴審の判決言い渡し時の裁判長裁判官横河敏雄、裁判官柏井康夫、裁判官中西武夫の(敬称略)各裁判官の判断のほうが理由があるような気がする。あと純粋な疑問として、何で熊本氏は今になって言い出したのだろうか。気にならないわけでもない。