共犯者

共犯者
新潮社
松本清張

読後の感想

 タイトルと同名の短編小説を含んだ短編集。

 短い小説では松本清張のよさを出せていないのではないかと思う。『典雅な姉弟』ではその一片を見出せたが、やはりボリューム不足は否めない。

 この中で一番の作品を選ぶなら「発作」。この中で、ゆっくり人が狂っていく心情が見事に描かれており、流石です。

 権威に固執する能力なき老害、と自分の能力を信ずる狷介不羈の人物が作品の軸をなしていると感じた。

 せっかく松本清張を読むなら、長い作品をじっくりとじわじわと読んだほうが、味わえると思います。

入社3年目までに勝負がつく77の法則

入社3年目までに勝負がつく77の法則
中谷彰宏

読後の感想
 『面接の達人』などの著作で知られる中谷彰宏さんの著作。
 自己啓発の一角に大量にあるので、いつも目には入っていたのですが
読んだことはなかったので、折角なので読んでみました。

 まず著者に対する感想としては、柔らかい書き方をしてはいるが相当厳しい人だなぁと。
 いい人だなんて勘違いをしたら大変な目に遭いそうです。
 こういった人に認められるようにまで成長するのは嬉しいんだろうな、と思いました。
 また同時にこういった人を自分の近くに常におきたいと思いました。

 本についての感想として、全体として仕事を請けるという視線で書かれているので、嫌な仕事は請けないという視点で書かれており若干注意は必要かと思います。

印象に残ったくだり
 レベルは絶対下げないで、君を1人の人間として扱って、本当はかなり難しい話をしています。
 たとえば、講演で話をするときでも、既に会社で働いている人たちはメモを取ってうなずいて聞いているという話をしましたけれども、聞いている人の中でもメモを取っている人と取らない人がやはりいるわけです。
 どうせ後で落書きになってしまうかもしれないけど、メモを持ってきている人と持ってきていない人の差はついてしまう。
 持ってきても使わないというのはいい。面倒くさいし邪魔になるからと思って、持ってこない人は持ってこない。でも、持ってきている人は持ってきている。
 話に集中するためにメモを取らないという人もいるかもしれないけれども、これから君が会社へ入って上司とつきあっていくときは、「ふり」でもいいから絶対メモを取ったほうがいい。
 そうしたら、しゃべるほうは安心してしゃべれます(P034)。

 ここで覚えておいてほしいのは、クレームと苦情は違うということです。
 クレームはお客さんの要望です。
 クレームに対する対応がまずいと、今度は感情的な文句になっていきます(P045)。

 若い人が新しい仕事を始める。協力する人はほとんどいない。
 それまで自分が世話になった人、仲よくしていただいている人のところへすがりに行く。
 「儲けにならない仕事なんですが、一緒にやっていただけませんか」と頼みに行く。
 いい人だったら、きっと協力してくれると思います。
 でも、そこで仕事ができてよかったと思ってはいけないのです。
 なぜならば、協力はその1回で終わりです(P133)。

 上の人間から下の人間は見抜けますが、下の人間から上の人間を理解することはできません。
 相手がすごい能力を持っていても、つまらないヤツに見えてしまう(P145)。

 失敗は財産です。せっかく失敗しているのだから、それを書き残しておくことが大事です。
 書き残さないで、頭の中にぼんやりとした状態で残していると、いつまでたっても気持ちはつらい。
 悩みの状態で残っている(P159)。

 いったん落とした信用は取り返し不可能と考えないといけないと、子供のころからずっと教わってきました。
 いったんなくした信用を取り返すには時間がかかるという発想は甘いのです。
 時間をかければ信用が回復するというスタンスに立っているからです(P178)。

初めて起こるミスはない。前回の反省が足りないのだ(P196)。

 一番危険なのは、まず恥をかかないことです。
 もう一つは、恥をかいていることを意識しない、恥に気がついていない状態です。
 自分が今非常に恥ずかしいことをしているにもかかわらず、それが恥ずかしいことだと分からない(P230)。

実践できるくだり
 苦手な人ほど、挨拶をしておく。
 あの人は苦手だな、あの人にはきっと嫌われているなと思っている人がいるとします。
 そうしたら、僕はその人に対してはちゃんと挨拶をしておく。
 挨拶しておかないから、挨拶もされないし、ますます嫌われたかなということになる(P105)。

レバレッジ勉強法

レバレッジ勉強法
本田直之

読後の感想
 リーディング・シンキング・時間術と来て、ついに勉強法まで書き上げたか、と思い読み始めました。

 率直な感想、「レバレッジ」はあんまり関係ないような気がしました。タイトルに入れたかっただけでしょうか。
 勉強方法論としてではなく、目標の設定について書かれた本でした。タイトルに誤解が生じやすいなと思いました。

 もっとも役に立つと思われる記述は、情報の管理の方法(P172)だと感じました。情報をシェアするという視点は、非常に参考になりました。

すぐに実践できるくだり

 経営に必要不可欠な資産運用の知識は、年度末だけ「決算書が良くわかる」という類の本を熟読するより、日々家計簿をつけたほうが、ずっと深く勉強できます(P053)。

 無意識かつラクに勉強を続けたかったら、「型にはめる」仕組みづくりが有効です。
1.スケジュールを決めて型にはめる。
2.ノルマ化して型にはめる(P086)。

 大人も時間割を活用しましょう。勉強しようと決意した大人は、子どもに比べてはるかに意志が強く、目的意識も明確なのですから、より強固なツールになります。
 モチベーションを高めることばかりに注力して時間割の便利さを見落としては、空回りになります(P094)。

 休憩時間をどれだけ取るかも決めておくのが大切です(P106)。

 通読の途中、「一章分が終わった、三日間たった」という区切りがついたところで、必ずそこに該当する過去問をやります。
 物事はインプットとアウトプットがセットになったときはじめて定着します(P125)。

 情報をファイリングしてはいけない(P173)。

知的な痴的な教養講座

知的な痴的な教養講座
開高健

読後の感想

 頭のいい中年の教養があふれる文章、との呼び込みで購入して読んだのだが、ほぼ猥談に近いという内容の本です。

 ただ文章自体はとても読みやすく、また短いエッセイが50章入っているという、敷居の低い本でもあります。

 教養としての部分にはいいエッセイが多いのですが、中でも特に秀逸なのが第二十六章の『コモン・センス』。
 この章のために一冊本を買っても悔いはない内容でした。『コモン・センス』の著者、トーマス・ペインの生涯について書き、そこから現代の状況にまで敷衍させる文章は、その文才と文章構成能力に鳥肌が立ちました。

『下剋上の時代を生き抜く即戦力の磨き方』

『下剋上の時代を生き抜く即戦力の磨き方』
大前研一
PHPビジネス新書

読後の感想
 徹底して自分個人の力を信じて邁進、という考えの下書かれている本です。
 いま所属している国や会社がどうなろうと、自分の力で生きぬいていく能力を身につけなければならない、というのが骨子だと感じました。

 今のままではいけないと警鐘を促すという意味で、大変参考になりました。例えるなら後頭部から殴られたような印象でした。
 とくに、語学力(英語)、財務力・問題解決力が重要だと説かれており、早速行動を開始しました。

印象的なくだり
 エスカレーターがこれからもうまく動いてくれるかを気を揉む暇があるなら、隣の階段を全速力で駆け上がれる体力をつけるトレーニングを、一刻も早く始めることだ(P026)。
 スペシャリストやゼネラリストというのは、環境や前提条件がドラスティックに変わってしまったら、その能力は途端に使い物にならなくなってしまうということだ(P038)。

 必要とあらばそれまでの常識や、たとえ成功経験から学んだ知識であっても、あっさりアンラーン(学習し直す)して、そこからゼロ・ベースで仮説・検証を始められる勇気と柔軟さはすごい。
 これこそがどんな環境にも色あせないプロフェッショナルの証なのである(P041)。

 即戦力に必要な「三種の神器」。
 即戦力というのはあくまで、まったく新しい環境に放り込まれても、冷静に本質を見極め、正確な判断や意思決定のできる、プロフェッショナルのことなのだ(P047)。

 私自身は、語学力(英語) 、財務力、問題解決力の三つが鍵だと思っている(P048)。

株投資の原則
一、株の性格と常識を勉強する
 株の構造や、株式投資にはどんなリスクがあるかなどは、取引を始める前に、必ず正確に理解しておかなければならない。
 また、相場全体が上昇しているときは「インディックス株を買え、こういう下げ局面では目をつぶって運輸株だ、電力株だ、消費財大手だ」といったセオリーが投資にはあるから、そういうものも知識として、知っておく必要がある。
二、身近に株を一緒に勉強する仲間を作る
三、世界を観る(P085)。

 問題解決の第一歩は「問題がどこにあるのか」「なにが問題なのか」を、自分で見つけ出すことだ。
 それには少しでも疑問を感じたらとことん追及し、この問題の本質はどこにあるのか自分で自分に問うことを繰り返す「質問する力」(Inquisitive Mind)が不可欠だ。
 そして次は、なぜその問題が発生するかという原因に言及し、何をどうすればその原因を排除できるかという仮説を立てる。
 ここで重要なのは「なぜ」という問いかけに対し、「もしかしたらこうなるのではないか」という仮説を設定できるかどうかである。
 仮説を立てたら今度は、その仮説の検証だ。もちろん仮説は仮説にすぎないから、そのままそれが問題解決につながるとは限らない。
 仮説がうまくいかないとわかったら、そこで新たに仮説を立て直す。あるいは仮説を実行すると、そこで新たに問題がおこるかもしれない。
 そうしたらその問題の原因を探り、取り除く仮説を立てる。これを真の解決策にたどり着くまで、何度も繰り返すのだ。
 これが問題解決法(プロブレム・ソルビング・アプローチ)の基本である。
 つまり問題に直面したとき、その答えを知っているかどうかではなく、常にこういうプロセスで問題解決にあたれるのが、問題解決力があるということなのだ(P094)。

 思いつきを結論にするな(P096)。

 危機感がないから考えない
 危機感がなければ、考えようという気が起こらないし、考えないのだから、論理的思考や問題解決力が育つわけがないのである(P113)。
生活のなかでパターン化したほうがいいと思われることは、全部パターン化しておく(P132)。

 事実の裏づけがないことをいおうものなら、「それはお前の意見だ。そんなものは聞きたくない。事実に基づいた発言をしろ」と、途端に非難の礫が飛んでくるのも、マッキンゼー式会議の特徴だ(P148)。

 先が見えないからこそ、長期的な目標を持って、自分の人生を設計すること。
 とくに三十五歳を過ぎたら、いつまでに自分はこれをやるというように具体的な目標を掲げ、いまよりさらに高い次元に向かって努力することを、意識的かつ強制的にやらなければダメだ(P174)。

 日本には、教育によって国の秩序を維持してきた歴史がある。戦後の混乱期ですら、国土が無法地帯になることなく、国民が粛々と復興に励むことができたのは、まさしく明治以降の教育の賜物だ。
 だから、いまもし社会不安が増しつつあるというのなら、それは経済格差が原因というより、むしろ近年の教育に問題があると考えるべきだろう。
 ただし教育というのは漢方薬なので、効果が出るまである程度時間がかかる。その間は国民一人ひとりがセキュリティレベルを上げて乗り切るしかない(P190)。