世界の日本人ジョーク集

中央公論新社
早坂隆

読後の感想
 日本人に関する世界のジョークを集め、筆者の視点から解説などを加えた本です。人種的なジョークがほとんど入っていないので安心して読めました。

 筆者がルーマニアに住んでいたときの体験がところどころに登場し、普段東欧の人がどんな感情を日本に抱いているか考えたことがなかったので、新たな発見でした。

印象的なくだり
 マルクスとケインズがあの世で出会い、そして激しい議論を始めた。
 相反する思想を持った二人、やはり意見は合わなかったが、たった一つだけ結論の一致をみた話題があった。
 それは「自分の理想を体現した国家とはどこだろうか?」という問いであった。
 二人とも、「日本」と答えたのである(P080) 。

この本を読んで
 ユーモアというのは、やはり会話の潤滑油であって、ユーモアばかりというのは問題だが、全くないのもやはり問題なのかなと感じた。
 できればなるべく会話にユーモアをはさめるように、あらかじめ準備していきたいなと思いました。

図解整理術

図解整理術 仕事のできる人の、この”手法”を盗め!
三笠書房
壺阪龍哉

読後の感想
 かなり昔に読んだはずなのに、なかなか出来ていないことが多くて反省させられる点が多い本でした。

 すべての人に当てはまるとは思いませんが、ルーチンワークの点だけなら、参考になる人は多いと思います。

 この本を読もうと考えたきっかけは、自己紹介の方法の部分がかなり秀逸だと感じたからです。最近多くの人に会う機会を持てるようになり、自分の自己紹介の下手さに意気消沈していたので、ゆっくり考えるきっかけになりました。

自己紹介の方法についてのくだり
まず、自己紹介で語る項目は、名前、年齢、干支、出身地、血液型、性格、趣味、得意とすること、夢、好きな言葉の十項目である(P050)。
伝えたいポイントを逃さない方法
why-目的の明確化-話す内容から無駄を無くす
whom-聴衆分析-聞き手の興味や関心をとらえる
what-話す内容-序論→本論→結論の「三段構え」を使う
when-時間配分-時間制約の中で内容や表現を工夫する
where-話す環境-部屋の照明、空調は?聴衆は立っているか、座っているか
how-話し方-堂々と、親しみやすく明るい態度で話す
check-評価とフィードバック-遠慮なく指摘してもらい、次につなげる

印象的なくだり
 留守番電話が苦手だといって、不在だとわかると切ってしまう人もいるが、これは非常に失礼なことだ。
 相手はこちらに配慮して留守番電話を使っているのだから、用件を伝えるか、せめて名前だけでも残しておこう(P125)。

向上心

向上心
サミュエル・スマイルズ
竹内均訳

読後の感想
 『自助論』、邦題では『西国立志編』で有名なサミュエル・スマイルズの著書。

 百年以上も昔に書かれた本とは思えないほど、現在にも通じる部分の多さに驚かされます。ただ残念なことに、引用として登場する人物の多くを知らないため、その言葉の引用の真の意図まではつかみかねました。

肝に銘じようと思ったくだり
 行動ばかりかあとさきを考えずにむちゃな物の言い方をする人もいる。

 頭をすばやく回転させ、おそらくその場の座興で痛烈な言葉を吐くような衝動的な天才は、皮肉やあてこすりを勝手にいうものだ。

 それが、いつかは自分の身にはね返って命取りになる。
 相手をからかうつもりで機知にとんだ意地悪ばかりいっていたために失脚した政治家さえいる(P171)。

 世の中には悪人よりも善人のほうが多く、悪人は善人よりも大胆だという理由だけで優勢を保っているのだ。
 「われわれは決断力の強い人間をどうしてもほめたくなる。われわれがよく悪人の味方をするのは、悪人がこの力をもっているからにすぎない。(略)」とペルテスは述懐している。

『僕はパパを殺すことに決めた』読了感想

読んでいる途中の感想はこちら
https://fukudashigetaka.com/article/73176052.html

mixiのレビューの転載なので一部かぶっているとこもありますが。

 奈良県の自宅放火事件を題材にしたルポです。供述調書の引用がなされており、鑑定をした医師が、秘密漏洩罪で逮捕されています。こういった事情もあり、かなり手に入りにくい本になっています。

 全体を通しての一番大きな印象は、その引用の多さです。最後のほうは割と著書自ら書かれていますが、前半はほとんど引用です。

 供述調書は本来外に出ないもので、プライバシーの権利によって守られているはずのものです。
 それを「だが、この事件の大きな原因は、父親にある。その事実から目を背けてはならないと私は思った。だから本書に、父親の供述調書の全容を記すことに決めた。」(P059)と、わずか二行で記し、正当な手段を経ないで手に入れた情報源を基にし、それを出版してしまうところに、この著者のプライバシー感覚が如実にあわられていると感じました。
 著者の考えはある一つの考え方であって、明らかにジャーナリストとしての正常なバランス感覚を逸脱していると思います。

 この考えは文章のところどころから感じられ「少年が逃げている間に何をしていたかについては、私が週刊誌や月刊誌にレポートを寄せた以外は、これまでいっさい報じられていない。私は供述調書により、その全貌を掴んでいる」(P182)などからも読み取れます。

 肝心な原因については、鑑定書の考えをそのまま踏襲しただけの考察です。独自の観点などは読み取れませんでした。自分は、本来こういった類の本は、著者が地道に情報を集め、分析し、考えたことを書き著すことが、重要だと考えていますので、これでは著者は何のために出版したのか全然分かりませんでした。

 あくまでも暴露本としての評価にとどまる本だと感じました。

『僕はパパを殺すことに決めた』

前にも書きましたが、タイトルの本を手に入れたので読んでいます。
前回の感想はこちら
https://fukudashigetaka.com/article/72970221.html

 全体で250ページで現在半分くらい読み進んでいるのですが、率直な感想として「よく本を出す気になったな」と思うくらいのひどい内容です。
 まず文章の八割以上が供述調書の引用で占められており、著者本人が書いた部分はごくごくわずかでした。本来供述調書は外に出ない性質のものであり、それを前提として話すわけですから、プライバシーの侵害もいいところです。

 プライバシーの問題のデリケートなところは、一度流失してしまうと取り返しが付かないことにあります。

 それを「だが、この事件の大きな原因は、父親にある。その事実から目を背けてはならないと私は思った。だから本書に、父親の供述調書の全容を記すことに決めた。」(P059)と、わずか二行で記してしまうところに、この著者のプライバシー感覚が如実にあわられていると感じました。著者の考えはある一つの考え方であって、明らかにジャーナリストとしての正常なバランス感覚を逸脱していると思います。

 それが、正当な手段を経ないで手に入れた情報源を基にし、それを公表してしまうところが、その感覚の一端を示していると感じました。ちなみに、この著者に供述調書の内容をもらした崎濱盛三医師は、奈良地検に、刑法の秘密漏示罪の疑いで逮捕されています。同容疑での逮捕は異例。しかも、新聞報道を見る限り、検察に逮捕されているようです。