『ヤクザが店にやってきた―暴力団と闘い続けた飲食店経営者の怒濤の日々』

『ヤクザが店にやってきた―暴力団と闘い続けた飲食店経営者の怒濤の日々』
朝日新聞社
宮本照夫

読後の感想
「暴力団と闘い続けた飲食店経営者の怒涛の日々」との煽りどおり、スナックで絡んでくるヤクザとの物語を書いた本。著者は気骨のある人物で読んでいてすっとします。それにしてもスナックというのは色々な悩みもあるんだなぁと思いました。
時間としては結構昔のことが多く、今はこんなに任侠の世界ではないんだろうなぁと感じながら読みました。

印象的なくだり
退職した刑事の感想である。
「(中略)、暴力団は、その町で一番羽振りのいい店を狙うものなんだよ。閑古鳥が鳴くようなシケた店なら、暴力団でなくても押さえられるさ。
あんたの店に大きな顔で出入りできれば、というよりあんたの店を牛耳ってしまえば、川崎でも、肩で風を切って歩けるというもんじゃないか」(P135-136)。

『日本人の犯罪意識』

『日本人の犯罪意識』
中央公論社
青柳文雄

読後の感想
刑事訴訟法の観点からも、日本人論の観点からも勉強になる一冊でした。ワクワクするエピソード満載で楽しめました。
専門用語が多用されているので一般受けするかは判りませんが(多分無理)。

印象的なくだり
参考人といってもいろいろで、マス・コミが重要参考人と称しているのは実質的には被疑者に近い者で、ただ後で犯罪と関係がないと判ったときに、記事の訂正とか
損害賠償とかを請求されないように、隠れ蓑に使っているわけである(P189)。

明治政府に招かれて治外法権撤廃のための国内法の整備に努めていたボワソナードがある夕方通訳を連れて裁判所の横を通ったところ、裁判所の中から悲鳴が聞こえてくる。
ボワソナードが通訳に「あれは何か」と聞いたところ、通訳は平気な顔で「今拷問しているんです」と答えた。
ボワソナードは大変驚いて明治政府に献言して拷問をやめさせたのが明治一二年であり、事実の認定は証拠によることになったのが明治一九年である。
法廷で拷問をしていたのでは、審理の公開などはとんでもない話である(P206)。

戦前の裁判所構成法では、裁判官、検察官、弁護士、裁判所書記官はいずれも黒い繻子の法服をつけ、神主のような法冠をかぶることになっていた。
ただその法服、法冠の刺繍の色が違った。裁判官は紫で慈悲を現し、検察官のものは赤で正義の怒りを現し、弁護士のは白潔白を現していた(P207)。

殺人事件の再審で問題となった血液型の鑑定などその一例とすることができよう。
こういう事件で、弁護士として被告人に不利な血液型の鑑定をした鑑定人への反対尋問に一番効果的なのは、「あなたはこの結論を絶対のものと思いますか」という殺し文句的の一句だろう。
自然科学は社会科学にくらべると、絶対的な結論がでやすいには相違ないが、巨視的にいえば、絶対のものがないからこそ従前の理論を批判しながら自然科学が今日の進歩を来たしたのだから、鑑定人としては「絶対とはいえません」と答えるだろう(P224-225)。

日本人は、他国民から欠点を指摘されるのを好まないし、そのような批判に接しても彼らがよく判らないからそのようにいうのだと考えがちである。
そればかりでなく、自ら自国民の欠点を厳しく批判もしないのは、日本人が和の社会に住んでいて、そのような批判をする人を変り者として白い眼で見るからであろう(P250)。

他人のレビューを読んで
SNS内でのレビューなので引用は控えますが、著者の文章は一貫して実務の観点から書かれているので、理論とはかけ離れているとの指摘がありました。
特に、個別の事件によって理論を変えて対応するとの記述は理論を重んじる人にとっては我慢ができないというのは、まさに現実問題として生じていることだと思います。
216ページに傍聴席の傍聴人を状況証拠の要素として加味するとの記述に、「とんでもない!」との指摘がありました。完全に読み飛ばしていましたが、流石にこれは著者も筆が滑ったのでしょうね…。

『悪魔のささやき』

『悪魔のささやき』
加賀乙彦

読後の感想
少し刺激的なタイトルですが、内容については「個」と「集団(本の中では「場」とか「気」)」のお話。いわゆる日本人論に着目した本です。
内容は何故雰囲気に流されやすいか、それを避けるためにはどうすればいいかなど。
その避ける方法として挙げられている「死について考えること」は非常に共感しました。

印象的なくだり
(前略)、その人がなぜ殺人をおかしたかを突きつめて考えていくと、しばしば理由のわからないケースが出てくる。
どんなに単純に見える殺人も、実は複雑多様な糸で織られているんです。
それを裁判で、動機というたった一本の糸に収斂させようとすること自体、無理があるのではないでしょうか(P025)。

人間というのは弱い存在です。
自分が好きなもの、いいと思っているものは否定されたくないし、自分の考えを否定するような情報より都合のいい情報のほうに、つい目がいってしまう。
さまざまな情報を公平に拾いあげ、それを客観的に弁別し考察するという方向にはなかなかいかないものなんです。
ネット社会になって、たくさんの情報がインターネット上を飛び交い、私たちはそれを自由に見ることができる。
しかし、多くの人はそのなかから自分の知りたい情報、好ましい情報だけをピックアップしているんじゃないでしょうか。
いや、むしろネットという便利な手段を利用して自分の望む情報を探している、と言い換えたほうがいいかもしれない。
インターネットの登場で、かつてのように国が情報を操作し国民をだますのは難しくなったけれど、私たち自身が自分をだますことは相変わらず続いているのです(P071)。

心のなかのモラルが崩壊し、たくさんの業種で不正が行われ、見逃されているということは、誰でもだまされる危険があるということでもあります。
賞味期限の切れた肉をお惣菜に加工して売っているスーパーの店主が、耐震強度偽装のマンションを買ってしまうかもしれない。
いい加減な建物を建てて儲けた建築会社の社長夫人が、振り込め詐欺にひっかかるかもしれない。
振り込め詐欺をしている連中だって、農薬まみれの野菜や産地偽装の牛肉を口にしているかもしれない。
そんな具合にだまし合ってる私たちを見て、悪魔は大笑いをしているんじゃないでしょうか(P138)。

『君のためなら千回でも(上)(下)』

『君のためなら千回でも(上)』
『君のためなら千回でも(下)』
早川書房
カーレド・ホッセイニ
佐藤耕士

読後の感想
原題は「THE KITE RUNNER」。
アフガニスタンでの少年の友情の物語。人種、内乱、宗教と様々な要因でその友情は翻弄されてしまいます。
文字にすると陳腐な表現になってしまいますが、かなり感情移入をして読みました。過去に友情に何らかの負い目を負ったことのある人ならなおさらでしょう。
下巻に入ってからは、予想外の展開も起こり、一気に読んでしまいました。それほど引き込まれました。
実を言うと自分にイスラム教やアフガニスタンの知識がないことをこんなに悔しいと思ったのは初めてでした。もちろん知識がなくとも読み進めることはできるのですが、本質的な部分まで理解したいと思ったので。しばらくは目標としてイスラム関係の本を読んでみたいと思わせる一冊。

オススメです。

内容の要約(裏表紙より)
上巻
「君のためなら千回でも!」召使いの息子ハッサンはわたしにこう叫び、落ちていく凧を追った。同じ乳母の乳を飲み、一緒に育ったハッサン。知恵と勇気にあふれ、頼りになる最良の友。しかし十二歳の冬の凧合戦の日、臆病者のわたしはハッサンを裏切り、友の人生を破壊した。取り返しのつかない仕打ちだった。だが二十六年を経て、一本の電話がわたしを償いの旅へと導く–全世界八〇〇万人が涙した、衝撃のデビュー長編。

下巻
「もう一度やり直す道がある」わたしとハッサンをよく知る友人ラヒム・ハーンは告げた。電話回線の無効にあるのは、わたしの過去、まだ償いの終わっていない罪。わたしは迷いをふりはらい、パキスタン行きのフライトに飛び乗った。そこに、わたしを打ちのめす悲しい真実が待ち受けているとは知る由もなく–アメリカとアフガニスタンを舞台に、少年時代の罪に立ち向かう男の姿を感動的に書き上げる、世界的ベストセラー。

『100億稼ぐ仕事術』

『100億稼ぐ仕事術』
ソフトバンクパブリッシング
堀江貴文

読後の感想
途中からライブドア関連の宣伝ばっかりで閉口しました。
メールの使い方など、一般的な使用法に限定されておりこれではタイトルどおりの仕事術は不可能でしょう。
経営については蛇足もいいところ。
ところどころに著者の性格を表す記述が見受けられ、その部分がその後の人生を暗示しているかのような…。
いま最も電車の中で読むのが恥ずかしい一冊でした。

印象的なくだり
デキル営業ほど、ともすれば自分のセールストークに酔ってしまい、独りよがりのことを話がちである。
実は私もそのような指摘を受けたことがある。たまには自分のセールス・トークを録音・録画してみて、あらためて見てみるとよいだろう。
かなり恥ずかしいが、自分の欠点がすぐ分かる。
簡潔にしゃべっていない、同じことを何度も繰り返している、「えーっと」「あーっと」という言葉が多すぎる、視線があさっての方向を向いている、資料ばっかり
見て説明をしている(P042)。

会議の前には、その会議の目標を決めた方がよいだろう。
ゴールがどの辺にあるのかを参加者全員が共有しないと、話し合う内容がずれてしまい、いつまでたっても結論の出ない会議になりがちである(P074)。

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