『ストレスフリーの仕事術―仕事と人生をコントロールする52の法則』

ストレスフリーの仕事術―仕事と人生をコントロールする52の法則
二見書房
デビッド・アレン

読後の感想
GTD(Getting Things Done)、何かを成し遂げる技術について書かれた本です。
この手の本は、若干胡散臭いと思っていたのですが、それは苦労しないといいものが手に入らない錯覚だったような気がします。
この本の一番のいい部分は、週次レビューに代表される「振り返り」の重視です。
逆に今ひとつだった部分は体系がないこと。メルマガの切り貼りの文章は、少し萎えます。
P204の図を本の初頭に差し込めばもっと理解が深まると思うのですが。

ちなみに自分は下の写真のように、縮小コピーをして手帳に挟んでます。何かを思いついたときにメモして、この通りにやってみると…まぁ、ちょっとは楽かも。主観的にはあんまり上手に活用できていませんが。

20080502GTDのワークフロー.jpg

印象的なくだり
行きたい場所に行くには、今いる場所がどこかを知らなければならない(P038)

本当にやるべきことをすっかり把握していない状態で、「優先順位」を定めることは、実は、自分が本当にやるべきことから逃げていることだったりするからだ(P056)。

毎週かならず「やるべきこと」をレビューする機会があるとわかっていれば、次の機会までまる1週間のあいだ、「やるべきこと」についてまったく考えなくてよい、という贅沢を味わうことができるのだ。
7日間のあいだ「幸せなバカ」になりきって、ただ「行動するのみ」という状態でいることができる(なんと生産的なことか!)(P068)。

(前略)私は「やるべきことはドアの前におく」ことを実践することにした。
どうしても職場に持っていかなくてはならないものがあったとき(それを忘れたらクビになってしまう!)、あなたはどうするだろう。
そう、ドアの前にそれをおくことだ。このやり方は単純だが、実に効果的だ(P085)。

どう見ても効率がいいとはいえないプロセスにしたがって仕事や生活をしている人がいかに多いか、最近、あきれることが多い。
ある時点でだれかが–当時はたぶんもっともな事情で–そのプロセスを作り出したのだろうが、その事情は今とはなっては存在しないからだ(P088)。

価値観を徹底させれば、こまごまとした規則は必要ない(P148)。
人間関係、あるいは仕事上での付き合いでのストレスの大半は、お互いの価値観がずれていることに気づかないことから生じる。
そしてこのズレは、実際に困った事態に直面するまで表面化することがないのが一般的だ。
新しいメンバーが次々と加わってくるにつれ、私たちのチームは共通の価値観を意識的に明らかにし、表現するようにしてきた(P149-150)。

計画を立てることがいちばん必要なときにかぎって、計画など立てている暇がないときである。
きちんと整理しなくてはいけないときにかぎって、わざわざ手を止めて整理などしていられない気分のときである。
(中略)その理由は、実際に時間やお金やエネルギーがあるときに、ふたたび大変な状況を予防するための準備の必要性、緊急性を感じないからなのだ(P159)。

仕事を遅らせ、組織のやる気をなくさせる最高の方法が、「長期的な」というラベルをプロジェクトにべたべたと貼り付けることだ。
このようなプロジェクトを設定すると、それに「(一応)手をつけた」ということだけで満足してしまい、なんだか半分完成させてような気分になる。
そして、困ったことに実際にそれを完成させる意欲がふきとんでしまうのだ(P190)。

『夢に日付を! ~夢実現の手帳術~』

夢に日付を! ~夢実現の手帳術~
あさ出版
渡邉美樹

読後の感想
手帳の使い方というよりも、その前提となる自分、人生の目的について特化して書かれた本です。
徹底した自己管理について書かれており、自己啓発されること必至です。
ただ、手帳の使い方、手段部分についてはごくごく平凡であり、具体的に知りたいなら本書は余り参考になる部分が少ないかもしれません。
むしろ、この本の素晴らしいところを一点挙げるとすると、徹底したブレイクダウン方式が取られていることです。
一点の迷いもないところが、却って新鮮で、影響されれば効果大でしょう。

印象的なくだり
ここで大切なことは、自分がワクワクするような物やサービスに囲まれて生活するためには、いったいどれくらいのお金が必要なのかを、しっかりと考えてみることです(P085)。

部下から尊敬される上司、社員から目標とされるような経営者となるために必要な教養を得ようと思ったら、五年や一〇年の勉強で足りるわけがありません。
これも「一生勉強」という視点に立てば、永遠の目標だとも言えます(P121)。

眠る時間も意識しよう
それを目標化するために、「毎晩一二時から六時までの六時間の睡眠を取る」と決めるのもよいでしょう。
実はこう決めておかないと、多くの人は睡眠を取りすぎてしまいます。
とくに理由もないのに九時間、一〇時間と眠ってしまうのはもったいない。
なぜなら、それは「意識されない時間」だからです(P153)。

このように日記で一日を振り返ることの効用はなんでしょうか。
それは反省です。人間は反省することでしか成長しないからです。
計画の軌道修正と自己反省。
これが日記を付けることの最大の意義でありメリットです(P201)。
日記をつけ終わったら、私は三分間で翌日の予定をシュミレーションしています(P202)。

過去に読んだ類似の本と感想
『能率手帳の流儀』野口晴巳 感想はこちら
『システム手帳新入門!』舘神龍彦 感想はこちら
『一冊の手帳で夢は必ずかなう』熊谷正寿 感想はこちら
『仕事で差がつく手帳の技術』長崎快宏 感想はこちら
『佐々木かをりの手帳術』佐々木かをり 感想はこちら

『母に襁褓をあてるとき―介護 闘いの日々』

『母に襁褓をあてるとき―介護 闘いの日々』
中央公論社
舛添要一

読後の感想
読んでいて胸が痛くなり、一度は読み進めるのが苦痛で読むのを中断しました。
それは無意識のうちに我が家に置き換えて読んでいたからです。
この家庭は、確かに不幸が重なったと言えますが、決して我が家に起こり得ないということではありません。
介護という問題が家族にとってどれほどのことかを考えさせられずにはいられません。
人は必ず老います。そのときに、どう対応するか、そのきっかけになると思います。
是非読んで欲しい一冊です。

印象的なくだり
(前略)介護は社会全体の責任だという考え方を全国民が共有する必要があるのです(P013)。

私は自分の不注意と不勉強から、母を救う機会を失しています。
早めに、私が気づいて医者に頼んで適切な処置をしていれば、痴呆の進行を大幅に遅らせることができたでしょう。
とくに悔いが残るのは、後で記すような事情があったとはいえ、在宅介護を諦め安易に老人保健(老健)施設に母を入れてしまったことです(P019)。

老健施設はお年寄りの家庭復帰が目的の施設なのですが、現実には、八~九割は特養ホームの代用品になっていると言ってもよいと思います。
つまり、最終的には特養ホームに行く、しかし、空きベッドがないので老健施設で待機しておく、という使われ方が圧倒的に多く、リハビリをまじめにやって、家庭に戻れるように体力を回復させることなど行っていない老健施設が多いのです(P039)。

この世に生を授け、育ててくれた親のことを考えれば、少しでも長生きさせてあげたいと思うのは子どもとしても当然なのですが、介護という課題は、そんな当然の人情すら吹き飛ばしてしまうほど過酷で、親子の絆すら断ち切ってしまう類のものなのです(P040)。

日本では、医療は専門知識と権威を持ったお医者さんや看護婦さんが、無知な患者に一方的に与えるという認識がまだ広く共有されています。
だから、患者にわからないようにカルテを横文字で書くといったことが平気で行われています。
しかし、この考え方はもう改めなければなりません。
カルテは患者のものですし、もはや情報を独占することによって権威を高めるような時代ではないのです。
医者が出す薬の内容もわからないまま、患者の負担ばかり重くなるのでは、たまったものではありません。
医療改革の前提、情報の開示です。
しかし、私たち患者の側にも責任はあります。
国民が、医者や医療施設の出す情報に無関心であるかぎり、情報開示は実現しません。
正しい情報を求めようとすれば、手間暇がかかりますが、私たちがそれを厭っていたのでは、患者の権利は守れません。
国民もまた努力が必要です
(P105)。

おむつについて、あと二点述べておきたいと思います。
まずは、何歳になっても、男は男、女は女であることを忘れてはいけないと思います。
とくに女性の場合、自分の裸を男の目にさらすことほど恥ずかしい思いをすることはあまりないのではないでしょうか。
(中略)どうしても人手が足りず、一度だけ私が母のおむつの面倒をみたことがありますが、やはり母は露骨に嫌な顔をしました。
それ以来、おむつの取り替えには、男の私は関わらないことにしています(P109)。

少しずつ長く伸びていく秋の日差しが、母の和室をやさしく包むとき、横たわった母の満足げな言葉が聞こえてきます。
「ああ、極楽、極楽」(P237)。

『佐々木かをりの手帳術』

佐々木かをりの手帳術
日本能率協会マネジメントセンター
佐々木かをり

読後の感想
 幸せな人生を送るために、手帳がどのように役に立つのか、という観点で書かれた本です。
手帳とは何か、という目的の部分ではなく、どのように使えばいいかという手段の部分が秀逸です。
特に決断の部分は、簡単に実行でき、なおかつ効果も大だと感じた。

印象的なくだり

幸せになるにはどうしたらいいか?
答えは、意外とカンタン。私は「幸せの方程式」というのを持っている。
非常にシンプルな方程式だ。
期待している行動=実際の自分の行動=ハッピー(P031)

行動することを自分と約束してみて、それを守るということを重ねていくことが、手帳を使ううえで、一番大切なことだからだ(P064)。

手帳に行動計画を書くということは、それを見ながら仕事をするということである。
何のために手帳に自分の行動計画を一元化して書くのかというと、それを常時見ていることでスムーズに計画どおりの行動ができるからだ(P075)。

どうしても理由があって今は決められない場合もあるだろう。
(中略)そんな場合は、「回答する日(決断する日)」を決めて、相手にその場で伝えるのがいい(P164)。

六分表というのは、一枚の紙に、六分刻みでメモリがついている紙で、(中略)結果を記入していく。
なぜ六分ごとかというと、そもそも、この方式は、米国のコンサルタントや弁護士が、毎日の業務を管理するために活用していたものだからだ。
たとえば、一時間六〇ドルのコンサルタントだとすると、彼らは一時間の一〇分の一ずつ請求してくる。
「佐々木からのメールを読むのに二分、資料を調べて返事のメールを書くのに一〇分、合計一二分使った」となると、その仕事をした一一時から一一時一二分までの六分表でいう二コマを「佐々木とのメール」などとして記録し、私に六〇ドルの一〇分の二、つまり一二ドルを請求するのだ。
(中略)もう少しいえば、「誰にも請求できないことに時間を使っていた場合は、仕事をしていたとみなさない」といった概念があるわけである(P184)。

素早く理解されるということは、当然、何度も説明しなくてよいので時間短縮になるし、シンプルメッセージであれば
正しく伝わる可能性も高い(P192)。

実践してみたこと
 本書で紹介されている一日の時間帯で区切られているリフィルは早速購入して使っています。

 ちなみに購入したのは、Bindexのリフィルno.301、1日計画表(263円)30枚入りです。

過去に読んだ類似の本と感想
『能率手帳の流儀』野口晴巳 感想はこちら
『システム手帳新入門!』舘神龍彦 感想はこちら
『一冊の手帳で夢は必ずかなう』熊谷正寿 感想はこちら
『仕事で差がつく手帳の技術』長崎快宏 感想はこちら

セックスボランティア

セックスボランティア
新潮社
河合香織

読後の感想
 寝た子を起こすな、と表現されるように、障害者の性という今までタブー視されていた問題に切り込んだ一冊です。その意味でも、功績の大きい本だと思います。
 感情の問題が生じてきてしまうので、本来の問題と向き合うのは難しいと感じました。
 介助者による自慰の手助けなど、かなり生々しく書かれていますが、著者がきちんと取材していることが伺えて安心して読めました。
 現実にあることなので、もっと多くの人に読んでもらいたいと感じました。

印象的なくだり

「おんな の こ と あそびに いきたかった けっこんも したかった こども も ほしかった きょういくも うけたかった でも そう おもうことさえ ゆるされなかった」
文字盤の上に、静かに涙がこぼれ落ちた(P032)。

NVSHの本部があるハーグへ向かう途中、電気事故のため、電車が途中で止まった。
ホームに降りると、初冬のよく晴れた空から吹く風は痛いくらいの冷たさだった。
仕方なくタクシーに乗り換えた。シートに身をうずめて、運転手と雑談をしていた。大柄の黒人中年男性だ。
(中略)彼は「障害者や高齢者の性のケアは必要だ」とうなずきながら、こんなエピソードを話してくれた。
先日、スーパーに強盗が入り、店員が犯人を追いかけて組み伏せる事件があった。
しかし、そのときに暴力を振るったということで、強盗ではなくて、店員が逮捕されてしまったのだそうだ。
「オランダ社会における権利の主張は行き過ぎていると思う」彼はそう嘆いた
(P162)。

「(前略)、障害者について、世間全般がもっと自分のこととして切実に感じてくれないと変わるのは難しいでしょう。
障害者には自分はならないだろうってそう思っている限り、障害者が抱えている問題は自身のこととしては感じられない。
せめて想像くらいはして欲しいのです。結局、障害者と健常者が隔てられて暮らしている。(後略)」(P205)